その14
激動日本せいうち界鳥羽水族館

07.08.16.up


日本中のせいうちに会いたい、せいうちせいうちを呼んでいるのだ!!

(・・・ひさしぶりのこのフレーズ! いや、やっぱりこうでなくっちゃ!!)

そしてせいうちせいうちを求め、今日も流浪う。


日本せいうち界に激動の口火を切ったのは、老舗としての歴史を持ち、
近代的大規模水族館の先駆けともいえる業界の大手、鳥羽水族館であった。

鳥羽といえば、国内唯一のジュゴン飼育を手掛けるなど、昔から海獣には造詣が深いが、
これまでセイウチだけは飼育をしていなかったのである。
たしかに、かねてから「セイウチを入れる計画があるようだ」との噂話があるにはあったが、
なかなか公表されずにいたところ、探検隊は前回来訪時にその兆候を察知していたのである。
そう、水族館隣のフェリーのりばへと続くデッキ「水の回廊」に新設された水槽、
深い水場と岩場の陸地が半々という構成から、ひれあし系海獣用と見られた。
ただし、最初にそこに入居したのはトドのロゼちゃん。
だがいまさらトドプールを新設するのか? いや、これはきっと・・・。

そしてその予想は的中する。
2005年も押し迫った12月29日。 日本で10番目となるせいうち飼育館が誕生したのだ!
ロシアからのちょっと遅れたクリスマスプレゼントは、♂♀2頭のせいうちベイビー。
その吉報に触れ、せいうち探検隊は正月早々、新たな探訪の旅に出発したのである。


三重方面は、正月は特に混雑する。 それは伊勢神宮への初詣客が押し寄せてくるからだ。
日本中からバスを連ねてやってくる参詣客の渋滞を避けるため、初めての鉄道旅行となった。
名古屋から近鉄ビスタカーに乗れば、快適な時間を満喫するほどもなく鳥羽に到着。早い!


当日はあいにくの天候であったため、雨を避けて鳥羽駅からバスに乗る。近いんだけどね。
入場券を買ったら迷わず水の回廊へ。 途中のフロアでスナメリやらマナティやらジュゴンたちが
「おいでおいで」しているが、ここはダッシュ、ダッシュ!
ペリカン、カワウソ前を通過して“例の”水槽に向かうと、こんな貼り紙が。
おーう、鳥羽名物(?)の海獣イラストだ。 もうセイウチの絵もできてるんだね。
これで何かグッズを作ったらいいのに。 ←すぐ買いそう


プール右手の陸地部分には、以前にはなかった区画ができている。
区画とはいっても、突貫で組立てたベニヤ壁で囲ってあるだけだけど。
その中を覗いてみると・・・いたいた! 小っちゃいけどポンポコリンなおなか。
かわいいせいうち坊やが寝ているよ!


む・・・むぐぐぐ・・・ふしゅ〜・・・。
ん?寝ぼけてんのかな? 伸びをするようにひれに力を入れたり上にあげたり・・・。
何の夢を見ているの?


お、起きた・・・。
くりっとした目がかわいいじゃない。 男前になりそうな顔立ちだよね。
よ、こんにちは?!


こっちに気がついて、もぞもぞ起きだした。 こっちへ来ようとしてんのかい?
おいしょ・・・んしょ・・・んーと、んーと・・・ぐぅーーー
だーっ、寝てていいよ、寝てて。


むにゅぅ〜。
あはは、眠いんだけど、こっちも気になるのね。
ごめんねー、せっかく寝てたのにねぇ。


また寝ちゃった。
でも、ひれをぱたぱた振って、こっちを呼んでるみたい。
そうか、断熱材の銀色シートを敷いてもらって、ヒーターをかけているから
温ったかくて気持ちがいいんだね。


・・・と思ったら、足下というかひれ下(?)に流れ出る黄色い液体が。
あーっ、寝小便タレぞうだぅ!
温かくて気持ちいいので、やっちまったのね。 まぁ赤ちゃんだからね。
そういう間にも、こんこんと湧き出る神秘の泉。
(この子は♂だけど、おチン●●は生殖孔という穴の中にしまってある)
ライトに照らされてキラキラと黄金に輝くそれは、おなかを伝って川のように流れていく。
・・・なんとなく、生命の尊厳を感じたような気がしたね。(←気のせい)



ん?さんざん寝ていた坊やが急に起きたぞ。
一所懸命にダバダバと這って奥へと向かう。
誰かが来るのを察知したようだ。

そこへやってきたのは、哺乳瓶を手にした
スタッフさん。

やっぱり、ごはんの気配を感じ取ったのだね。


んきゅ、んきゅ
おー、イイ飲みっぷりだぁねェ。
なるほど、おなかぽんぽこりんな訳がわかったよ。
いっぱい飲んで、どんどん大きくなるんだね。 さすが男の子!

ぷは〜っ。おいしかったー・・・。
1リットル以上あったみたいだけど、全部一気に飲んじゃったね。
とっても満足そうでなにより。
だけど、もう目がトローンとして眠そうだよ?


ほら、もう寝ちゃった。 ほとんど行き倒れ状態(笑)。
おなかいっぱいだし、温ったかいし・・・シアワセ。


閉館直後、ワガママを言って直接あわせてもらいました!
おおぅ!寄ってくる、寄ってくる!
人懐っこい坊やですねぇ? うふふふ。


くんくん・・・。

小さくても、ちゃんとセイウチ流の挨拶を
知っているのだね。

かがんで顔を近づけると、短いおひげを
ツンツンさせて寄ってくる。


せいうち仲間と知って安心したのか、そのままの体勢で寝ちゃった。
寝る子は育つというけれど、この子はよく食べるしよく寝るし、すぐ大きくなるね。
はやくりっぱに育って、鳥羽のヒーローになるんだよ。

この時点では、この子の名前はまだ決まっていなかったのですが、実はスタッフさんの間では
既に「ポウ」と呼ばれていました。いつも「ポゥ、ポゥ!」と鳴いてばかりいたからだそうですが、
その後の公募で正式に「ポウ」というお名前をいただきました。 よかったね!


※このポウくんと一緒に来た女の子がいたのですが、来館当初から体調を崩しており、
探検隊訪問時も看護体制が組まれていて会うことは叶いませんでした。
その後、懸命の看病も虚しく、回復することなく亡くなってしまったとのことです。
残念ではありますが、動物の赤ちゃんというのは環境の変化などの影響を受けやすい
デリケートなものなのだなと改めて痛感しました。 ご冥福をお祈りします。



                  



そして、季節は巡り、初夏。
もう1頭の女の子せいうち「クウちゃん」を迎え、ポウくんもすくすくと育っているとのこと、
半年でどのくらい大きくなったか、改めて確認しに行くことにした。
ポウ、覚えているかな?
伊勢〜鳥羽〜二見エリアを循環する、三重交通の「CANバス」。
今回は、このCANバスを利用して行くぞ。
いざ乗ってみると、内部は普通の路線バス形式のレイアウトながらシートはCANバス特製仕様。
地域の名所や名物がイラストでデザインされているのだが、しっかりセイウチがいるのを発見!
ナイスです! 三重交通さん!


ポウちゃん、横浜のせいうち兄ちゃんが
おみやげ持って遊びに来てくれたよー。


ぽぅ? なにそれ? 食べられるの?

んー、ポウちゃんは、ちょっとムリ。

つまんない・・・。

あー、ゴメンよぅ。今度は違うの持ってくるよ。


ポウちゃんと一緒にやって来たのは、女の子のクウちゃん!
クウちゃんには初めましてだけど、2頭ともまるまるしててかわいい〜!

ポウちゃんは「ポゥ、ポゥ」、クウちゃんは「クゥ、クゥ」と鳴くというけれど?
・・・よくわからんかった。


ねえねえ、何やってんのー?
お仕事中のスタッフさんを見ると、興味津々で寄ってくる。
今、お仕事してるから、じゃましちゃダメだよ。
いいじゃん、遊ぼうよ〜。ねえったらねー。
あーもー、しょうがないなー。
・・・そういうアナタの顔は、とっても嬉しそうです。ashikariさん!


ほーら、でっかい氷だよー。あげよっか?

わぁーい、ちょうだい!ちょうだい!
あっ、いいなぁー。私にもちょうだいよぉ。

やっぱり氷に釣られて来ると思ったよ。

うーんと大っきいのがいいな!

わかったよ・・・ほれ、同じ大きさのな。


わーい! 氷! 氷! たーのしぃー!!
口に氷のカタマリを吸いつけて深いところまで持っていって放すと、
氷が不規則な動きで浮こうとするので、それを追いかけて捕まえる。
せいうちは、氷で遊ぶ天才だね!


あ〜ん・・・溶けちゃったよぅ・・・。

溶けてなくなってしまった氷を 
残念そうに見つめるポウちゃん。

また明日、もらいなさいね。
うーん・・・んしょ、んしょ・・・。

なんでそんな一番難しそうなラインで
よじ登ろうとするのさ? で、ドコ行くの?

これからショーがあるの。見てく?

もうその歳でショーやってんの?すごいじゃん。
ぜひ見せてもらうよ。 がんばってね! 


♪ぱーぱーららったったー ぱっぱー (←こんなだっけか?)
賑やかな音楽に乗って、花道からポウ・クウの登場〜! 拍手〜っ!


1、2、1、2・・・。
ちゃんと4本足(ひれ)で歩いてくる。えらいねー。
でも、2頭ともちょっと時間がかかる・・・。


はーい、まずはごあいさつぅー!
今日もお客さんいっぱい来てくれてるよ。
はりきって行ってみようっ!!


ううう、ボクちょっと不安。うまくできるかなぁ・・・。
心配そうな目で見上げるポウちゃん。
大丈夫、大丈夫! 何やっても許したげる!


あ、一応、念のため説明しておくけど・・・。
左の写真、ヒゲがちょっと短めで首が太いほうが、男の子ポウくん。
右の写真、ヒゲが長めでややスリムなほうが、女の子クウちゃんですよ。
わかる? ・・・よね。


まずはクウちゃんのポーズ集から。
ヒレを振ってごあいさつー。 それから、日曜日のお父さんのポーズ?
最後はカメラ目線でおすまし顔。


さーて、お次は本日のメインエベント!
ポウちゃんvsクウちゃん、ミルク早飲み対決〜! ぱふぱふぱふ!
でも、ただの競争じゃ面白くナイ。
ポウちゃんは哺乳瓶を自分で持って、クウちゃんはピンクの洗面器から飲むぞ!
レディ? ゴーッ!


ぶ、ぶはぁ〜っ・・・。
うわっ、クウちゃんすごいコトになっちゃってるよぅ?!
うぇーん、半分くらい顔についちゃった・・・。
ぷぷぷ・・・。 でもそんな顔もカワイイよ。


そんなわけで、今日の勝者はポウちゃーん! おめでとう!
勝者には、クウちゃんから祝福のキッスでーす。
ちゅっ


無事「セイウチ・コミック笑(ショー)」も終了、引き上げるポウ・クウ。
でも後ろから見ると、そっくりだぁ。


おうちに戻ったら、ショーで飲み足りなかった
おやつの残りをいただきまーす。

また器用に自分で瓶を持ってちゅうちゅう。
ああ、もう終っちゃった・・・。
まだ飲み足りないよ。もっとくれないかなぁ。

哺乳瓶を返さずにブランブラン。


あっ、口のまわりにミルクがついてる!
って、ぶちゅ〜はないでしょ! もう、おませさんなんだから。


ショーも終ったし、おやつも飲んだし・・・。
なんか、眠くなってきちゃったね・・・。
むにゅぅ〜。
2頭ともすっかりおネムだね。 それじゃあ、そーっと退散しますか・・・。


・・・え、もう帰っちゃうの?

うん、残念なんだけど、今日は電車だから。

じゃあ、最後にお別れしなくっちゃ。


ばいばーい! また遊びに来てねー!
待ってるからね!
おう! また来るから、それまで元気に大きくなっていてね。


余談・・・ですが。
特別展の会場で、“メカセイウチ”を発見!
これがまたなんというか、妙にリアル。 本気で箱にセイウチが隠れてるのかと思った。


下から見ると、口の中にアヤシゲな穴が・・・火を噴くのじゃあるまいな?
なになに・・・。 お魚をあげてみよう、ですと?
横に置いてある疑似餌のようなお魚の模型を口に近づけると・・・
うおっ!「ゴオォォ!」という音とともに吸い込んだっ?!
すげぇ〜。 食餌ギミック付のセイウチヘッドとは。
鳥羽工房、おそるべし。






さらに余談ですが。

館内に置いてあるゴミ箱なんですけどね。

これって何かに似ているよなぁ・・・と考えた。



↓ ↓ ↓
で、どうです? こういうデザインは。

ちょっと合成写真で作ってみましたが、

これは、そのまんまイルカになりますよ!

鳥羽水族館さん、ぜひやっちゃってください!




鳥羽の新人せいうち「ポウ」と「クウ」を訪ねた記録は、とりあえずこれでおしまい。
今度訪ねるときには、もっち大きくりっぱなせいうちに成長していることでしょう。
また会える日まで、アディオス・アミーゴ!









鳥羽水族館の屋上、海を一望するところに「母なる海へ」と記された慰霊碑があります。
いま生きている海獣たちの陰で礎となった先輩海獣たちが眠っています。
そう、若くして散ってしまったもう1頭のせいうちさんも・・・。
もし、みなさんも立寄ることがあったら、一度お参りしてあげてくださいね。