海上保安庁巡視船“いず”体験乗船記

08.07.26.up



海の日となる7月20日、海上保安庁の巡視船「いず」の体験航海に乗船する機会が与えられた。
通常であれば、乗せてもらうことなどまずありえないのであるが、とあるツテで乗船券をいただいたのだ。
またとないチャンスに心躍らせながら、横浜港に隣接する防災基地へと向かった。

ややうす曇り気味であったが、湿度は低く、微風で波は穏やか。 船に乗るには上々の天候だ。
♪文化の花の咲き薫る 横浜みなと風なぎて〜  ときたもんだ。


出港地は、第三管区海上保安本部。

三管本部は、横浜みなとみらい地区と山下公園とのちょうど間、

新港埠頭と並んだ横浜海上防災基地にある。

赤レンガ倉庫パークのすぐ隣、と言ったほうがわかりやすいだろうか。
新港地区の観光施設に集まる人波を脇目に歩くと、

停泊中の巡視船群が見えてきた。


・・・しかし、まん中の異様な形をした船はなんだぁ?


これが、本日乗船する大型巡視船「いず」。
イメージしていた武骨な雰囲気はなく、舳先がすらっと伸びた流麗な船体をしている。
しかも現行の巡視船は、従来のグレー単色ではなく、
白基調にマリンブルーを重ねた爽やかなイメージカラーで塗装をされているのだ。


乗船からほどなく、防災基地を出港となった。

横浜ベイブリッジをくぐり、東京湾へと向かう。


ちなみに、ベイブリッジは橋長860m、橋柱の高さは172m。

橋部上層の首都高速は、海面から50m以上もの高さを走っている。


ベイブリッジはどの角度から見てもすばらしい。 世界に誇れる美しい斜張橋だ。
まぶしいばかりの夏の青空に、すらりと伸びた白い橋脚が映える。


赤い灯台を越せば、いよいよ東京湾。

港に入りきらない大型貨物船が多数浮かんで待機している。


その中を縫うように、船は進んでいく。


さて、それでは「いず」の船内を見て回ろう。

まずは、船首に向かう。

舳先(へさき)の部分から振り返れば、錨装置の向こうに

3層から成る白いブリッジがそびえ立っている。

今日は一般公開とあって、いたるところに人、人、人・・・!


ブリッジ正面に据えられた20mmバルカン砲。
武骨さの少ない「いず」の中で、巡視船という最前線に赴く船であることを垣間見ることのできる部分だ。
ピカピカに磨き上げられた銃身が火を噴いたことは、訓練以外ではないそうであるが、
もちろん、使わぬ装備であることが平和な日本たる証なのだ・・・。
それでも、銃には「機能美」という、人を惹きつける何かがあるなぁ。 ついじっくりと見入ってしまった。


航海途中で、ブリッジの一般公開イベントが始まった。

意外と(?)広いスペースに、10人を超える要員が働いている。


写真手前の白い制服の方は、二等海上保安監(佐官相当)

階級章からみて、当船の船長であろう。
ブリッジ中央に2台並んだ大型レーダー表示機。

緑色表示の左上部分には港湾施設、本船の周りには

おびただしい数の船が航行しているのが見てとれる。

たしかに、東京湾は世界トップクラスの船舶過密地帯だゎ。
ブリッジを出て、後部甲板へと行ってみよう。

船側には救命ボートや作業用内火艇等が吊下げられている。
後部デッキにやって来た。

今日はすっかり荷物置場になっているが、中央にHマークが

描かれているように、通常ではヘリポートとして使用される。


おお、シャッター内の倉庫では、記念グッズの臨時売店も

開かれているみたいだ。 ちょっと行ってみよう!


人だかりをかき分けていくと、倉庫の前で撮影イベントをやっていた。
おお、おおお! 子供らと並んで愛嬌をふりまいているのは、うーみん
あれ、今日はうみまる兄ちゃんはいないの? ・・・え、うみまるって誰かって?
それじゃあ、海上保安庁の花形マスコット、うみまる&うーみんをご紹介しましょう!






「うみまる」(兄)
タテゴトアザラシ
平成10年4月10日生
階級:二等海上保安正
身長約2m、体重約100キロ
音楽隊での担当はサクソフォン




「うーみん」(妹)
タテゴトアザラシ
平成14年5月12日生
階級:三等海上保安正
身長1m85cm、体重3サイズは「ナ・イ・ショ!」
音楽隊での担当はクラリネット


「みんな、わかってもらえたかナ?」

うみまる&うーみんは、公的機関のマスコットの中でも

数少ないアザラシキャラなのだ。

「海」関係だと、安易にイルカとかクジラにいっちゃうところ、

タテゴトアザラシとは・・・海保さん、ナイスです!


←よく見たら、今日はちゃんと夏服バージョンね。


さて、そろそろ模擬演習の時間かな。


「いず」は減速し、大きな円を描くような航路に。

そこへ猛然と追い上げてくる小型巡視船!


波を蹴立てて・・・という形容がぴったりの勢いで駆け抜けていくのは、巡視艇「きりかぜ」。
すばやいエンジンのオン-オフと操舵の組合せで、見事なドリフトVターンを披露してくれた。
その回転半径は、目測で約10m余り。 すげェぜ!


さらに、遠くから低い羽音が響いてくる。

遥か後方から高速接近してくるヘリコプターの影が見えてきた。

それは羽田から飛来した特殊救難隊(Special Rescue Team 通称・特救隊)

キタキターーーーっ!


「いず」の周囲を旋回する大型ヘリコプター・シュペールピューマ型「JA6685わかたか」。
機体には、鮮やかに「Japan Coast Guard」の文字が並ぶ。
なお、以前の英語表記は「海上保安庁」をストレートに訳して「Maritime Safety Agency」であったところ、
「Safety」の部分が外国人から誤解を招くとのことから、諸国の海洋警察「Coast Guard」にあわせたそうである。
しかし、同型機「わかわし」は良いとして、「わかたか」はなぁ。 「若鷹」ではなくて「若貴」を想像してしまって・・・(失礼)


小型巡視艇「いそつき」を海難船に見たてた
リペリング降下救助訓練が開始された。


写真上:サイドドアを開け、接近する「わかたか」。
まだだいぶ高度があるのに、怖くないのか?!

写真右上:微速航行する「いそつき」上空にホバリングして隊員を降下。
微妙なタッチを要求される、高度なパイロット技術に固唾を呑む。

写真左:ラストに降下隊員2名を引き上げ、無事救助に成功。
「いず」のデッキからは拍手喝采が巻き起こった。


ほどなく、「いず」は反転して横浜港に船首を向けた。
前方には再びベイブリッジがその姿を見せ、その先にはみなとヨコハマの全容がパノラマで広がる。


港湾エリアであることを示す赤灯台が見えてきた。

するとその向こうに、なにやら水柱のようなものがあがっている・・・が、

あまりにも水量が多く、水のカーテンのようになっていて

その中心に何がいるのかよく見えない?!
水柱の正体、それは海保所有の消防船「ひりゅう」だった。

おぉ、出港前に防災基地に停泊していた、あの船か!

他には類を見ない特殊形状をしたこの船、

日本船籍の中でも「最大」の称号を得る消防船である。

また、双胴船のメリットを生かして、

その場でスピンしながら360度方向への放水も可能。
船橋上部左右に各2本、中央に1本、双胴の両舷に各1本、

全7本のリモコンノズルから放出される水量は、

毎分46,000リットルと、これまたケタ違い。

一般的な大型消防車1台の放水量が毎分2,400リットル程度

であることを考えれば、そのすごさがわかろう。


際限なく水を吐き続ける「ひりゅう」の手前を、「きりかぜ」が横切っていく。
その遥か彼方には、鶴見つばさ橋の姿がゆらめく。


2時間半かけて、出発地の防災基地まで帰ってきた。

反対側の桟橋には、世界最大級の巡視船「しきしま」が見える。

こちらは「いず」よりもさらに大きく、ヘリ2台を搭載可能で、

ヨーロッパ圏から日本まで無寄航で到達できる航続距離を誇る。


停泊した「いず」に縦列駐車(駐船?)をした「ひりゅう」の横を歩いていく。
天を衝くような放水ノズルは、まるで高射砲のようだ。
かっこいい写真が撮れて満足!


そして今日のおみやげはコレ!
うみまるとうーみんの兄妹ぬいぐるみ。 これはあざらしグッズとしても希少でしょう?
下に敷いているのは、JCGハンドタオル。 使うの、もったいない?!








おまけのコーナー。
巡視船「いず」に体験乗船した海の日(7/21)の前晩は、横浜開港記念国際花火大会が開催されていた。
わざわざ見に行くのはいやなのだが、自宅2階からも遠くに眺めることはできる。
たまには変り種の花火も打ち上げられる。
右のなんか、スローで移すと椰子の木みたいだよね。
ラストのスターマイン大連発!
夜空が明るく輝いた一瞬だ。