TOYOTA  SERA   
        with Super Live Sound System



トヨタ・セラ。
知る人こそ知れ一般的には知名度の低い車種で、よく「これ、どこの(国の)車?」と聞かれたものである。
そんなセラがビスタ系販売店から発売されたのは、バブル末期の平成2年のことであった。
1500ccDOHC直4の5E-FHE型エンジンを搭載したフレームは、専用に新開発されたEXY10型で、
カローラUやスターレットの兄弟分とも言われるが、型式からもわかるとおり、本当はひとりっ子である。
自動車としての性能は、エンジンもそこそこ、内装もそこそこという、ほかには取り立てるところもない
普通のスペックで、つまるところガルウイングを搭載するためだけに設計された車と言えなくもない。
・・・が、それ故、純粋に「未来的デザイン」のみを追求した”ドリーム・カー”としての地位を確立したのである。
その後バブルが崩壊し、現在に至るまで、セラの跡を継ぐような純国産の”夢のクルマ”は現れていない。
そう、セラは平成の世に舞い降りた、最後の「翼を持った車」なのである。


セラ最大の特徴は、もちろん、ガルウイングドアである。
スーパーカー代表格であるカウンタック系のガルウイングがほぼ垂直上方に開くのに対して、
セラのガルウイングは、やや外側向きの斜め上方に、ガスダンパーの力を借りてふわりと開く。
この機構は、開閉に伴う人の動作を少なくし、乗降をより容易にするための工夫から生まれた。
全開時でも全高1875mmと1BOX車よりも低いため、立体駐車場でも天井にぶつかることはなく、
むしろ横方向へ425mmしか広がらないので、他車よりも狭いスペースでの乗降が可能である。


夏の室内放熱には、ハッチ全開モード!
もはやガル(かもめ)というより、セミっぽいような・・・っていうか、オーラバトラー系?(笑)
しかも低速ならば、このまま走ることもできるのだ。(決して公道ではやらないように!)


低く構えたフロントビュー。 3次曲面のボディが描きだす、丸みを帯びたフォルムがキュートである。
ヘッドライトは、ロービームのみプロジェクター式となっているが、照射角が狭くやや暗いのが難点。
そこで補助灯の登場となるが、純正オプションではなく、PIAA製のドライビングフォグを装備した。
これは、ゴールドの光がほぼ真横までの180゜をカバーしてくれるため、かなり有効なアイテムである。

リアビューは、比較的オーソドックスなクーペデザインでまとめあげられている。
熱線アンテナつきの曲面リアガラスは、1枚ガラスのリアハッチとしては世界最大と認定されており、
ガラス上部には「SERA」の大型ロゴ・ステッカーが貼られ、存在をアピールしている。(下の写真も参照)
また、「天使の翼」を象徴するウイング・ストライプが、ドアノブからリアフェンダーへと貼られている。
ちなみに、小ぶりのリアスポイラーウイングは、むにむにした触感のウレタン製である。
(前期型は全車共通で黒色ウレタンスポイラー、後期型はカラード+ハイマウントストップランプを装備)

キャビンはキャノピー型のグラストップである。
温室効果で夏は室内がものすごく暑く(というより「熱く」)なってしまうのが、セラ最大の泣きどころである。
しかし、このグラストップはガルウイングを際立たせるためだけのデザインではなく、
ガラス特有の反響を利用して、カーオーディオの音響効果を高めるという狙いがある。
音楽シーンに合わせた3モードに対応して、スピーカー角度が可変するリアスピーカーユニットを含む
スーパーウーファー付10スピーカーの”セラ・スーパーライブサウンド・システム”を搭載しているが、
これは当時のトヨタ最新システムであり、クラウン等の高級セダンに先駆けて設計されたものであった。


車内は明るく、開放的な雰囲気で満ちている。 オープンカーとはまた違った快適さがあり、
雨の日に空から落ちてくる雨滴を天井ガラス越しに眺めるというのも、また楽しいものである。
内装デザインは、カーブを多用したシンプルながら近未来的なテイストでまとめられており、
インパネもデザインに合わせ、あえてデジタルではなく回転計付の4連アナログメーターとしている。
なお、写真の4速ATの他に5速MT車の設定もあるが、ミッションの違いのほかには、
ライブサウンド装着・非装着の選択があるだけで、いわゆるグレードの別は存在しない。


乗車定員は4人となっているが、後部座席では
頭上にリアガラスが傾斜してくるため、ほとんど
チャイルドシート状態であり、大人が乗るには
相当の覚悟を必要とする。
むしろ、最初からエマージェンシーシートつきの
2シーターだと思っておいたほうがよい。
一応、後部シートの背もたれ部分を前屈させれば
トランクとつながるラゲッジスペースを作ることが
できるが、肝心のトランク内にウーファーが鎮座
していることから、積載量はほとんどないに等しく、
ゴルフバッグ2組程度が限界である。


「セラ」の語源は、仏語の「セラヴィ」だそうである。
非日常的なスタイルで、人生を愉しんでくれということだろうか。
無邪気な子供がガルウイングに目をまん丸くして「すげーー!」と叫んでいるのが、うれしい。
きっとセラは、大人が忘れかけた、未来への夢をのせているのであろう。






販売当時のパンフレットから(資料は後期型のもの)
全長はKカー並の3860mmしかないのに比べ、全幅はスターレットクラスよりも
60mmワイドの1650mmもあり、極端なショート&ワイドなレイアウトとなっている。
また、ホイールベースが2300mmと激短なことに加え、ハンドル切れ角が大きいため、
回転半径がすばらしく小さく、3車線分もあれば切返しなしの1発Uターンが可能である。
ボディカラーは、初期型ではワインレッドターコイズブルーパールイエロー
ガンメタシルバーといったメタリック系塗色のラインナップであったが、
後期型ではメタリックではないレッド及びブラックが加わった。
なお、初期型から後期型への変更は、マイナーチェンジのみでとどまったために
塗色追加のほか、外形的には全くと言っていいくらい、同じデザインとなっている。
ただし、後期型はリアウイングが色塗りとなりハイマウントストップランプが装備されたことと、
シート表皮材質が変更されて幾何学模様がついているので、よーく見れば区別ができる。


これが正しいセラの乗り方! このまま異次元空間にも突入できそうだ。
ピンチのときに「セラ」の名を叫べば、オートコントロールで飛んできてくれる
・・・といいな。



我が愛車・ワインレッドのセラは、長年にわたり家族の夢を乗せて走り続けてくれましたが、
15年という歳月に老朽化が進んだため、本年3月、後継にその座を譲り、旅立ちました。
きっと今ごろは、本当の未来を目指して大空をはばたいていることでしょう。
ありがとう、セラ。 夢の翼よ、永遠に・・・。

01.04.17.up → 05.10.25.refine