牙とヒゲ | |
セイウチ |
|
なんといってもせいうち最大の特徴は、長くて大きな2本の牙と 口のまわりに生えたたくさんの硬いヒゲがあることでしょう。 牙は犬歯の発達したもので、雄にも雌にもあって、年齢につれ伸びていきます。 小さいうちは牙がないように見えますが、2歳ころから外からも見えるようになります。 (水族館で牙のない成獣を見ることがありますが、これは歯髄炎という虫歯のような病気にかかったため 生命に危険が及ぶおそれがあると診断されて、治療のために抜かれてしまったものです) ヒゲは口と鼻の間に約440本生えており、1本が太さ約1.5〜2.0mm、 ちょうどスパゲッティの乾麺をややしなやかにしたくらいの硬さです。 岩場などにこすりつけて食物となる貝などを探すのに使う、触覚の役目もします。 耳たぶ |
|
セイウチ |
せいうちには、耳たぶがありません。 頭の両側、ちょうど目の後ろあたりに 小さい穴が開いているのが耳です(写真左)。 あざらしも同じように耳たぶがなくて、 穴が開いているだけです。(写真左下) 一方、アシカやトドには小さい三角形の 耳たぶがついています。(写真右下) |
ゴマフアザラシ |
カルフォルニアアシカ |
鼻 |
|
セイウチ |
セイウチ |
せいうちの鼻は、犬のようにはでっぱっていなくて、 おでこからヒゲのあたりまでほぼ平らになっています。 大きな鼻の穴で、息を思いっきり吸い込むことができますが(写真左上)、 水に潜るときなどは、左右から力を入れて穴を閉じることができます(写真右上)。 あざらしの鼻も、せいうちと同じように穴を大きく広げられ(写真左下)、 もちろん閉じることもできます(写真右下)。 |
|
ゴマフアザラシ |
ゴマフアザラシ |
口の中 |
|
セイウチ |
せいうちの口は、正面から見ると「∩」という 形をしています。 これは別に怒っていて「への字口」をしている わけではなくて、いつもこういう形なんです。 せいうちは、他の海獣たちと違って、主に貝や タコなどを食べているので、魚を追って捕まえる ようなことはあまりしません。 つまり噛みついて獲物を捕らえるという行動を しないため、口の部分が突き出している必要 がないのです。 食事のときは、二枚貝などを口にあてて掃除 機のように中身だけを吸い取って食べてしまう ので、むしろ平面にぺったりとつけられる口の 形が好都合というわけです。 だから、せいうちには門歯と呼ばれる前歯が ないんですね。(写真左中) でも口の奥をよく見ると、ちゃんと小さい奥歯が 並んでいるのが見えます。(写真左下) 写真の口の中を見せてくれているせいうちは、 両方ともまだ子供なので、小さい牙が生えかけ ている途中なのがわかりますね。 一方、あざらしたちは、魚を捕まえて食べている ので、顔全体がでっぱっていて、犬と同じような 歯並びをしています。(写真右下) |
セイウチ |
|
セイウチ |
ゴマフアザラシ |
おなか |
|
セイウチ |
ゴマフアザラシ |
せいうちもあざらしも、同じようにまん丸なおなかをしていますね。 これは寒い極地帯でも凍えずに生きていけるように、おなかに限らず体中に 皮下脂肪を蓄えているためで、その厚みは5〜10cm以上もあると言われています。 また、おなかのまん中あたりにおへその穴が見えていますが、 雄にはおへその下にもう1つ、穴があります。 これは生殖孔(生殖溝ともいう)と呼ばれるもので、中にはおちんちんを隠して(?)あります。 いつもブラブラさせていると水の抵抗が激しく、泳ぐのに邪魔になるため 必要なとき以外には大事にしまっているものなのです。 せいうちやあざらしのほか、アシカやイルカ、クジラといった 海獣全般にも同様のものがみられます。 |
|
しっぽ |
|
セイウチ |
あまり目立ちませんが、せいうちにもちゃんと したしっぽがあります。(写真左上) せいうちのしっぽは、短くて丸い形をしていて フリルみたいに毛が生えていることもあります。 あざらしも小さいしっぽを持っていますが、種族によって少しずつ形が違うようです。 ゴマフアザラシの仲間はヘラみたいな平たい形のしっぽ(写真左中)ですが、ゾウアザラシの仲間はピンと尖ったしっぽ(写真左下)をしています。 アシカやトドも、同様に小さいしっぽがあります。 (写真右下) どれもあまり役にたっていないように思われがちですが、水中を泳いでいる姿を観察していると、方向転換をするときなどにはさかんにピクピクと動かしており、体のバランスをとるのに利用しているのがわかります。 |
ゴマフアザラシ |
|
ミナミゾウアザラシ |
トド |
前ヒレ |
|
セイウチ |
セイウチ |
ゴマフアザラシ |
人間でいう「手」の部分にあたるのが前ヒレ。 みな水かきのあるた平たい形をしていますが、 掌にあたる部分には、ちゃんと指に相当する 骨が入っていて動かすこともできます。 せいうちやアシカの前ヒレには、小さな爪がついていますが、実際にはあまり役にたっているようには見えません。 一方、あざらしの前ヒレには鋭い爪がついていて、氷上を移動するときなどにはスパイク代りに使うことができるようになっています。 赤ちゃんせいうちのヒレはぷにぷにとしており、 モミジみたいでかわいいです。(写真右上) |
トド |
カルフォルニアアシカ |
足ヒレ |
|
セイウチ |
セイウチ |
カルフォルニアアシカ |
鰭脚類と呼ばれるせいうちやあざらしたちは、 1枚の尾ビレしかないイルカやクジラたちと違い ちゃんと左右独立した「足」ヒレを持っています。 でも、それぞれに動き方や役割などが微妙に 違っているのがわかりますか? あざらしをせいうちやアシカと区別するときに 決定的に違う場所、それが足ヒレの部分です。 まずせいうちの足ヒレから見ていきますと、前ヒレと同じように、小さい爪がついた水かきのある平たいヒレになっているのがわかると思います。 この足ヒレはつけ根の部分から前後左右に動かすことができ、まさに「足」と同じように陸上を歩くのにも使えます。 アシカたちの足ヒレも、せいうちと同様に、前後左右に動かすことができます。 しかし、あざらしだけは別で、ヒレの形こそ似ていますが、せいうちたちと違って関節を前の方に曲げることができません。 つまり、あざらしの足ヒレは、常に後ろの方を向いていることになります。 |
キタオットセイ |
|
バイカルアザラシ |
ゴマフアザラシ |
歩く |
|
セイウチ |
セイウチ |
トド |
足ヒレのところでも説明したように、せいうちや アシカたちの足ヒレは、ヒレのつけ根から前後 左右方向に曲げることができます。 せいうちたちは、この前方へも曲がる足ヒレを 使って、四足歩行をすることができます。 もちろん、陸上動物ほど器用にというわけには いきませんが、1トンを超す体重をも支えられる のですから、そのパワーは相当なものです。 反対にあざらしは足ヒレを前方に曲げられない ので、「歩く」ことはできません。 ですから、陸上を進むときは前ヒレと腹筋背筋 を総動員して、這うように匍匐(ほふく)前進する しかないのです。 特にゴマフアザラシなどは、おなかで弾むように ビチビチと進むのですが、これがまた愛嬌満点 でかわいいのです。(写真左下) |
ゴマフアザラシ |
|
泳ぐ |
|
セイウチ |
セイウチ |
カルフォルニアアシカ |
足ヒレの動き方は、水中での泳ぎ方にも大きく 影響しています。 アシカが足ヒレで舵を取りながら前ヒレで力強く 水を掻いて泳ぐのに対して、あざらしは前ヒレを ほとんど使わずに、足ヒレを主体として全身を 左右に振るように泳いでいます。 これは、陸上と水中のどちらを主な活動の場と してきたかの進化の違いによるもので、アシカ たちが陸上と水中を半々に生活するのに対し、 あざらしは、より水中をメインとした生活をする ための体に進化してきたからなのです。 陸上では這うことしかできないため、動きが鈍い ように思われがちなあざらしですが、水中では 圧倒的な運動能力を誇っており、泳ぐ速度や 潜水能力などは、ずば抜けて優れています。 せいうちの泳ぎ方は、アシカとあざらしの中間のような感じですが、主に足ヒレを使って推進力を得ているようです。 こうして見ると、あざらし>せいうち>アシカ の 順で水中生活型の傾向が高いと考えられます。 |
ゴマフアザラシ |
|
ゴマフアザラシ |
バイカルアザラシ |