銀河鉄道999 16番(HO・J)ゲージ 1/80 ・・・いま万感の想いをこめて、汽車がゆく・・・。 夢の銀河超特急999号を、限りなくリアルな鉄道車両での再現にトライ! 前回、Nゲージ・銀河鉄道999を製作したときの書きはじめと同じ文言であるが、 今度はひと回り大きい、いわゆるHOゲージでのリアル999号に挑戦した。 もちろん、今回もレイアウト上を実走可能な鉄道模型としての再現である。 |
本機のベース車輌としたのは、天賞堂「C62形蒸気機関車3号機JR北海道タイプ Quantum systrm」である。 アナログ制御ながら各種サウンドが楽しめるカンタムシステムについての説明は割愛させていただくが、 まずは、今回このベースモデルをセレクトした経緯から説明せねばなるまい。 HO※サイズのC62形は、鉄道模型各社から新旧とりまぜてさまざまなグレードやモデルで発売されているが、 この世界は実に奥が深く、ロッド1本1本まで独立の金属線で再現しているような超高級ブラスモデルは、 機関車単体40万円以上の販売価格もザラである。 たしかにこれらフラッグシップモデルは微細部にまでに こだわった逸品揃いではあるが、さすがにこのクラスに手を出すのはコスト的にもはばかられるし、 そもそもモデラーの仁義として、架空機の製作ベースに流用加工するとあっては、 生涯を賭けて渾身の力作を手掛けている模型職人や真のコレクターに申し訳ない。 そこで、なるべく細部まで表現されており、かつある程度は量産されているグレードのものを探した結果、 天賞堂のダイキャストモデルに白羽の矢が立ったのだった。 しかし、量産品と侮ることなかれ。 実走メインのスタンダードクラスと比べれば、その作りこみは一目瞭然。 ほれぼれするような素晴らしい造形だ。
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大叙情詩「銀河鉄道999」では、原作・映画編ともに、C62-48号機が描かれているのは周知のとおりであるが、今回は、ナンバープレート類を除き、その他諸々は純然たる48号機ではなく、筆者の個人的な記憶に刻まれた、最も機能的で力強く美しいC62を、天駆ける“銀河鉄道999”のイメージとして作成しようと考えた。 よって、実機の48号機とは、似て非なるものになっていることをお断りしておきたい。 (実際の48号機と外観上の大きな差異があるのは、ボイラー上のドーム形状、空気作用管の取り回し、デフレクター形状、先輪のホイール形状などが挙げられる。) ここでC62形機関車についてひもとくと、戦後の昭和23~24年にかけて製造され、特急などの優等列車牽引機として国内最大級・最高速を誇った旅客用大型テンダー式蒸気機関車で、全49輌が製造された形式であるが、当時のさまざまな情勢から、日立製作所21輌(1~21号機)、川崎車輌15輌(22~36号機)、汽車製造会社13輌(37~49号機)の3社でそれぞれ生産されたという変わった経緯がある。 実在の48号機は、汽車会社製C62の特徴である前後対称形のボイラードームであったことや、主たる現役での活躍の場が、常磐線の尾久・平機関区から、最後は山陽本線の糸崎機関区と、本州内の幹線であったことから、デフレクター形状や空気作用管の取り回しが北海道仕様の機体とは異なる。 また、同機独特の特徴として、第2先輪にC59形の水かき付きスポーク車輪を装備していたと伝えられている。 本来ならば、以上の特徴を踏まえて48号機を再現するのがリアル路線というものではあるが、なぜ敢えて北海道仕様の3号機をベースにしたのかと言うと、筆者の中のSL原風景というのが、SLが活躍の場を失って次々と廃車されていった昭和後期に、最後まで現役として走り続けていた北海道のSLたちの雄姿だったからであり、そのため北海道仕様のアイコン的特徴である“点検窓付き”除煙板はマストアイテムなのである。 しかし、実在の48号機は本州仕様であるし、北海道で稼働していた同じ汽車会社製の機体は42と44号機があるものの、ともに現在手頃な範囲ではモデル化されていない(しかも42号機は煙突とドームが一体式の特異形状)。 そこで、2号機“スワローエンゼル”との重連牽引で人気を博し、各メーカーからモデル化されている3号機を、999号の理想形として昇華させようと考えたのである。 |
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重量感あふれるメカニック剥き出しの鐵(くろがね)の車体は、機能美の極みとも言えよう。。 ボイラー周りのそこかしこに取り付けられたパイプや継ぎ手などの織り成す造形につい見とれてしまう。 パワーパックから通電すれば、正方向ではヘッドライトが、逆方向ではテンダーのリアライトが点灯する。 |
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機関車正面。 円筒状ボイラーの描く正円と、武骨な直線で構成されたいかにも蒸気機関車らしい顔だちである。 999のヘッドマークは、クロムメッキシートにプリンターで印字して作成している。 |
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メガロポリスステーションを出発し、空へとつづく線路を駆け上がる! 実車ではまず見られない、銀河鉄道ならではのアングルがたまらない。 なお、フレキレールを使用して撮影しているが、実は機関車の重さでギリギリいっぱい? |
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公式側 |
非公式側 |
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クローバーともレンコンとも評しがたい、独特の動輪デザインがたまらなく良い。 スポーク型の動輪より、断然かっこいい。 ここだけ見ていても飽きないくらいだ。 ボイラー左側面に這わせた空気作用管は、赤銅色が光り過ぎない程度に墨入れを施した。 作用管やランボード上の機器が取り付けられていることによって、ディテール感がグッとアップしている。 |
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運転台付近の状況。 各種プレート類は、48号機であることを基準に、汽車会社の 銘板を装着した。 (銀河鉄道株式会社が999号を建造する際に、いずこかに 眠っていた48号機を基礎車体として建造し、外装その他は 保存状態が良かった3号機等の余剰パーツを利用して銀河 特急用に再現した・・・と解釈していただければ幸いである。) 本モデルでは、通電~起動時にはキャブ室内灯も点灯する。 |
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機関車後方、テンダー車。 上のコラムでも述べたように、厳密には「炭水車」と言っていいものかはわからないが、石炭様のナニかを積載している。 しかし、積載しているのは最上面の表層部分だけであるはずで、その積載量はごく僅かであると考えられる。 なぜかというと、999のテンダー車は、客車側から機関車へ通り抜け可能な構造になっていることから、 通路の空間を除いた部分にしか、燃料その他を積載できないはずだからである。 すると、超長距離を運行する機関車出力の全てをこの物質で賄っているとは考えにくいことから、これは メイン動力源がダウンした時のために備えられた、非常用動力システムのための燃料なのかもしれない。 |
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↑オリジナル(実在車両と同じ)のテンダー車 |
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ここで、999号として作成するにあたり、解決しなければならないポイントがあった。 それは、テンダー車後部に貫通扉を設けるということである。 むろん、本来のC62テンダー車には、上の写真のとおり、後部に扉など存在していない。 かといって、全作品を通じて、客車からテンダー車へつながる貫通扉の描写や設定は見られないし、 これがテンダー車内通路である、という明確に説明されている絵もない。 しかし唯一、「さよなら銀河鉄道999」の後半に、サイレンの魔女に翻弄される列車内で メタルメナがよろよろと歩いているシーンがあるのだが、その通路は一般客車内とは明らかに違うデザインの 床や壁が青や紫に淡く光る短い直線通路であり、その直後にメタルメナが機関車運転台付近から 宇宙空間に身を投げている描写があることから、この光る通路こそがテンダー内の通路とみてよいだろう。 |
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新造したテンダー車後部の貫通扉。 今回は開閉ギミックまでは搭載していないので、右の開扉状態の写真はあくまでも想像図である。 イメージとしては、ナンバープレート取付部がギアレールに沿って、リアライトごと上へスライドし、 さらに内側のハッチ(下半分が見えている)が左右に分かれるように開く、というもの。 扉のロック機構等のデザインに、ちょっとだけ零士テイストを取り入れてあるのだ。 |
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貫通扉は、客車側とほぼ同じ高さになるようにしてあり渡り板も設置している。 実在車輌には絶対にないもののはずなのだが、意外と違和感なく見られるのは満足。 左の写真は、後進方向に通電した状態。 リアランプと赤色尾灯が点灯する。 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ |
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さて、今回HOサイズで999を再現するにあたっては、列車全体までは製作していない。 将来いつかは・・・という希望はないわけでもないが、コスト的にも相当なものになってしまうし、 第一、完成してもHOの11輌編成では、自宅に飾る場所が確保できない。 かといって機関車単体ではちょっと寂しいので、せめて1号車だけでも、ということになった。 前回Nゲージ版を作成する際に検証したとおり、銀河鉄道999の車輛編成は、 C62-[1]オハフ33-[2]オハ35-[3]オハ35-[4]オハ35-[5]スロ60-[6]スロ60(100)-[7]マシ35-[8]スヤ35-[9]スロネ30-[10]マイテ58 と推定されることから、1号車・オハフ33(車掌室付き三等客車)を作っていく。 |
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オハフ33-504は、Nゲージ版と同じ。 バリエーションの多いオハフ33の中でも、 戦後型に見られる、いわゆるキノコ折妻型の車輛を選択している。 車体色は、ちょっと渋めのぶどう1号。 (→実はぶどう2号が売り切れてしまっていた) でもスケール感に鑑みると、ややくすんだぶどう1号が絶妙のリアル感をもたらした。 |
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通常運行では車掌室が機関車直近になる向きに連結されている。 外観上は見分けがしにくいが、妻面に梯子が設置されている側に車掌室がある。 ちなみに反対側の同位には、左右にそれぞれトイレと洗面所が設けられている。 |
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戦前に製造されていたオハフ33では、車体側面を妻面に かけて斜めに絞りをかけた形状のものが多かったが、 戦後製造のものでは作業工程の合理化などの理由から 絞りをなくした一直線の車体となっている。 このように絞りがなく妻面から見ると屋根部分が張り出した 形状をして、「キノコ妻」あるいは「食パン型」と言われ、 人によっては切妻型と分類するむきあるが、妻面をよく 見ると半折妻となっているのがわかる。 だが、車体側面が一直線になるという点において、 999の編成としては最適ではなかろうか。 |
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「さよなら銀河鉄道999」のラスト(ラーメタル星を後に999が走り去るシーン)で、 駅に残ったメーテルを見返って鉄郎が叫ぶカットがあるが、その時に鉄郎が乗り出すように 立っていた列車最後部のデッキこそ、このオハフ33のリアデッキである。 ちなみにこの時は、大アンドロメダで撃墜された10号車(展望車)の機能を補うため、 1号車を最後尾にした逆編成となっていたという説が有力視されている。 |
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オハフ33の側面いろいろ。 トラムウェイ製のオハフは、ドアの手すりや雨樋等の細かいパーツが付属するなど充実しているが、 さらにインレタを使用して、号車表示サボや車輌諸元など、各所にマーキングを施している。 そして進行方向左側の車掌室には、おなじみの999車掌さんの姿が! |
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製作途中のショット。 室内全体は木目調の明るめのブラウン、座席は緑色クロス張りシートをイメージして塗装していく。 デッキへの扉や車掌室扉は自作で、車内ポスターも4種類各2枚を用意した。 ポスター柄は、銀河鉄道全路線図、太陽系近郊路線図、銀河特急111~999の紹介、 それに銀河鉄道株式会社の旅行広告(メーテルが登場?!)である。 取りまわされているのは、天井部分に仕込まれた室内灯や、妻面に配される尾灯用の電線だ。 実際のオハ35系車輌の設計どおり、室内灯が天井中央部に一列に並んでいる。 (参考:スハ43系は室内灯が二列に並んでいるので、999の設定とは違ってしまう。) LED採用であるが、電球色がいい感じにノスタルジーを醸し出している。 |
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車外からも窓を通して、ちゃんと車内掲示の路線図が見える。 映画「銀河鉄道999」の序盤、メガロポリス駅(地球)で出発を待つ999が描かれたシーンで、 1号車内に路線図が貼ってあるのが見えるのを再現している。 |
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尾灯及び室内灯が点灯する仕様になっているので、夜行列車の趣きが再現できた。 もっとも、宇宙空間を行く銀河鉄道では、これが普通の風景ということになる。 うーん、やっぱり乗りたい! 銀河鉄道に! ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ |
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機関車左右からの俯瞰を2枚。 煙突上部に回転式火の粉止めが装備されているのが見える。 |
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やはりNとは質感が違うなぁ。 蒸気機関車は円筒のボイラー形状や動輪などから、円と直線の組み合わせのイメージだが、 このアングルでは直線が強調された、疾走感のある顔をを見せてくれる。 銀河鉄道らしい、煤けていないクリーン感が良いね。 だからウェザリングは施さない。 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ |
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Nゲージ版ディスプレイの上段に、HO棚を増設した。 メーテル、顔の前を横切ってごめんね。 幅45cmのディスプレイケースにギリギリ(ムリヤリ?)収まった。 2号車より後ろは、まだ次元トンネルから抜けて出ていないということで・・・。 |
16.10.10.up
そして列車は星の海を目指す。 いま、出発(たびだち)の時・・・ |
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「鉄郎さん、私も元の体を取り戻すため、旅に出ようと思います・・・。」 本ページをアップ直後の16.10.20、車掌さんの声優を務められた 肝付兼太さん(80)が逝去されたとの訃報が入りました。 またひとり、偉大な声優さんをなくしましたことを残念に思います。 謹んでご冥福をお祈りいたします。 |